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ぶんがくにおけるこんにちのにほんてきなるもの

文学における今日の日本的なるもの

宮本 百合子

「文芸春秋」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,792 字 · 20 页

青空文庫

起させているのではあるまいか。分るようで分らない。そういうものがある。

私は混乱をかきわけて単純に問題に近づいて行きたいと思う。そして先ず何が、今日一部の作家の自覚をそのように迄苦しめている文学と一般読書人の生活感情の疎隔を生じさせたのであろうかということを考えて見たいと思う。そしてまた、壮年期に入りつつある時代に今日のような社会情勢にめぐりあったこれ等の作家達が、大人の文学を創りたいと思うと、何故その精神的な拠りどころを、官吏・軍人・実業家と称せられる社会の範囲に求めなければ、安心ならないような気になっているのだろうかということに就て。

『文学界』の座談会では、はじめの問題について、従来の文学は、既に文学が人間をひっぱりまわしているので、人間が文学の主でなくなって来ている。文学青年は、小説や評論から活きかたを学ぼうとするより、書き方をならおうとして読む、その特殊な読み方に作者が追随して来たから、遂にここに到ったと云われているようである。しかしながら、一般読者の胸の中には、折りかえして、では何故、現代の文学愛好者の大多数がそういう自他ともに低めるような情けない末技的興味にひき込まれてしまっているのであるかという反問が生じる。