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ぶんがくにおけるふるいもの・あたらしいもの
文学における古いもの・新しいもの
宮本 百合子
「風雲」について
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,257 字 · 11 页
「風雲」の主題は普遍性をもったものである。竹造という人物とその置かれている境遇、妻ゆき子との階級的夫婦としての特定条件の具体性など、作者がすっかり突ぱなして、客観的に描いてゆくことに成功したなら、すべての読者は、竹造の持っているいろいろな条件も、つまりは、百人、千人の階級人が、それぞれの事情において持っているであろう条件の一つとして作者にとりあげられていることを納得したであろうと思う。
しかし「風雲」の中で、竹造と作者とのけじめは、そのようにくっきりとしていない。作者は、竹造のこまごまとした内的推移についてゆくうちに、あるところでは全く竹造と同化して余韻嫋々的リズムへ顔を押しつけているために、作品の後味は、この作品がある特別な階級人をその輪廓の内から書いているような錯倒した印象を与えるのである。
積極的な方向をもつ主題なのであるから、作者がそれにふさわしい手法で、能動的に、しかもこくを失わず、複雑な竹造の内的活動と、妻ゆき子との交渉を、折々の情味ゆたかな具体性において引つかみ、押しすすめて行ったら、「風雲」は全く一つのつよくやさしい階級の心情を丸彫りしたものとなったであろう。