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ぶんげいじひょう

文芸時評

宮本 百合子

「中外商業新報」1937(昭和12)年7月30日~8月1日、3日、4日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,097 字 · 15 页

青空文庫

は小説として発表されており『文芸』の編輯者はモスクワかえりの「作家」として紹介しているのであるが、作家というのは何でも彼でも文字を書くものを総てひっくるめて呼ぶ名ではないのである。佐藤春夫氏は『文芸春秋』の社会時評に「諸共に禽獣よりも悲し」といい、ジャーナリズムが社会的効果に対して無責任であることを指摘しているが、もし現在のジャーナリズムにそのような弱いところがなかったならば同氏によって『文芸』に推薦されたと仄聞する勝野金政の小説などは、烏滸がましくも小説として世間に面をさらす機会はなかったのである。

「※(「さんずい+墨」、第3水準1-87-25)東綺譚を読む」という『文芸』の文章の中で、佐藤春夫氏は冒頭先ず「現代日本にもまだ芸術が残っていたのかというありがたい感激をしみじみと味わせる名作である」と荷風の「春水流の低徊趣味」が「主要な装飾要素になっている」文学精神の前に跪拝している。自分のその文章などは「末世の僧の祖師を売る者、妄言当死」と迄頭を垂れている。もしそのような芸術至上の帰依に満ちた芸心があるならば、佐藤氏も「モスクワ」が芸術品かそうでないか位は嗅ぎわけ得て然るべきであった。