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となんせんせい
斗南先生
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,262 字 · 44 页
ところが三月の中頃近くなって、またひょっこり、乱暴に美しく書きなぐった伯父の葉書が舞いこんできた。近い中にお前の所へ行きたいが、都合は良いか、というのである。大学の入学試験が四、五日中にすむので、その後の方が都合がよいのですが、と彼は返事を書いた。ところが、それから三日ほどして、入学試験の中の日に、その日の試験をすまして、下宿で机に向っていると、襖をあける女中の声と共に、後から、古風な大きいバスケットを提げた伯父がはいって来た。これから山へ行くのだと伯父はいきなりいった。彼には一向話が分らなかった。恐らく、伯父はすでに事の次第を前もって彼に向けて手紙で知らせてあるという風に勘違いしていたに違いない。よく聞くと相州の大山に籠るのだという。大山の神主某の所へ行って、しばらく病を養うのだという。伯父はその二、三年前から時々腸出血などをしていた。それを七十を越した伯父は、気力一つで医者にもかからずに持ちこたえていたのである。その出血が近頃ますます烈しいという。そんなに弱っている身体が、何かにつけて不自由な山などへ籠っては、ますます不可ないことは明らかなのであるが、それを言うと、どんなに機嫌を悪くするか分らないようなその頃の伯父であったので、三造も黙っているより外はなかった。