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あたらしいふなで
新しい船出
宮本 百合子
女らしさの昨日、今日、明日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,508 字 · 17 页
最初の良人の許をも彼女は決して愛を失って去ったのではなかった。二度目の良人に縁あって妻となって、二人の美しい娘たちさえ設けた今、三度そこを去って行手に何が待っているかということは、彼女には十分推察のつくことであった。二人の娘の女としての行末もやはり自分のように他人の意志によってあちらへ動かされ、こちらへ動かされするはかないものであって見れば、後に生き永らえさせることも哀れと思うからというはっきりした遺書をのこして、娘たちをわが手にかけて自刃したのであった。当時の周囲から求められている女らしさとはまるでちがった悽愴な形で、その夫人の高貴で混りけない女の心の女らしさが発揮されなければならなかったのであった。女らしさの真実なあらわれが、過去においてもこのように喰いちがった表現をもつというところに、女らしさの含んでいる深刻な矛盾があるのではないだろうか。そして、形こそさまざまに変転していながら今日の私たちも、やはり一層こみ入った本質でその同じ女らしさの矛盾に苦しんでいるのではないだろうか。
ヨーロッパの社会でも、女らしさというものの観念はやはり日本と似たりよったりの社会の歴史のうちに発生していて、あちらでは仏教儒教の代りにキリスト教が相当に女の天真爛漫を傷つけた。