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しんしゅん・にほんのそらをとぶ

新春・日本の空を飛ぶ

坂口 安吾

「読売新聞 第二六五九六号」1951(昭和26)年1月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,136 字 · 5 页

青空文庫

これは甚しく正直だ。

「ええ、とても、苦しいのです」

困りきった笑顔が可憐そのものである。

「今後も空の旅を利用なさいますか」

「こう苦しくては、ちょッと……」

これは又、爽やかなほど正直である。表裏一体をなし、さすがに日本娘の両代表だけの事はある。

しかし誰よりも音をあげたのは福田画伯であった

「僕はですね。ヘタな飛行家よりも飛行時間が多いですよ。しかしこんな苦しい旅は始めてだ。大型機のせいですよ」

結論、簡単をきわめる。実際は旋回廿分の東京見物が悪かったようだ。

酔わない人物、ただ一人。巨人軍の青田君。彼は特攻隊の飛行士だったそうだ。飛行時間二百時間の由、テレながら答える。腕に自信がないらしい。しかし僕のために説明の労をとり、空からの観察の良き指南役であった。今の高度三千六百ぐらい。青田君は教えてくれる。読売の人、計器を見て戻り、

「青田君の目測、ピタリですよ」

と、呆れた顔で私にささやく。

三原山の上空をとぶ。火口をかこんで砂漠がクッキリと、二ツの色と形が美しく面白い。西洋菓子のよう。砂漠の西方へ三本半の真ッ黒い溶岩の流出が見える。もう煙はない。富士が見える。