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しんしゅんぐうご
新春偶語
寺田 寅彦
「都新聞」1935(昭和10)年1月1日、「吉村冬彦」署名で。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,551 字 · 6 页
新玉の春は来ても忘れられないのは去年の東北地方凶作の悲惨事である。これに対しては出来るだけの応急救済法を講じなければならないことは勿論であるが、同時にまた将来いつかは必ず何度となく再起するにきまっているこの凶変に備えるような根本的研究とそれに対する施設を、この機会に着手することが更に一層必要であろうと思われる。可憐な都会の小学児童まで動員してこの木枯しの街頭にボール箱を頸にかけての義捐金募集も悪くはないであろうが、文化的国民の同胞愛の表現はもう少し質実にもう少しこくのあるものであってもよいと思われる。肺炎になってしまってからの愛児の看護に骨を折るよりも、風邪を引かせぬ予防法、引いたときに昂じさせぬ工夫に一倍の頭を使う方が合理的である。
凶作の原因は大体においては明白である。稲の正当な発育には一定量の日照並びに気温の積分的作用が必要であって、これが不足すれば必ず凶作が来る。それで年の豊凶を予察するには結局その年の七、八月における気温や日照の積分額を年の初めに予知することが出来れば少なくも大体の見当はつくということになる。
気温や日照を人為的に支配することは現在の科学の力では望むことが出来ない。