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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

と、ついそこらへでも出かけるように、旅立ってしまった。

洲股から栗原山までは、そう遠くもない。約十里もあろうか。晴れた日は、養老の峰つづきに、模糊と見えるくらいな距離である。

だが、一水の彼方は、三本木の砦、川並の砦、杭瀬の砦、大垣の城地と、往来という往来、すべて敵の要塞でないところはない。

で――藤吉郎は、遠く道を迂回して、養老郡の山づたいに、不破へはいった。

郷土人の人情や特性を知ろうとするならば、その郷土の山川風土を先に見るに如くはない。

不破郡は、美濃の西部山岳の麓であり、京街道への喉くびに当っている。

関ヶ原の秋草は美しい。

無数の川が、静脈のように縦横に走っている。

古い歴史と、数々の物語は、しかしみな血なまぐさい過去の碑として、秋草の根に残っている。

養老の峰々は、江州との国境をなし、伊吹の山には、たえず雲が去来していた。

竹中半兵衛重治は、この辺に生れた。――生れたのは稲葉山だというが、幼少から、その多くは伊吹山麓の岩手で育った。

岩手には、父重元以来の岩手城を持っていた。

砦造りの山城であるが、小なりといえども一城の子であった。