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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
03 第三分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页
「去年から仔細あって、わしの手に引き取っておるが、これがまた、一通りな童ではない。……ここでは、きつう羞恥んで、神妙に畏まっておるが」
藤吉郎が笑うと、寧子も老母もみな笑いだした。二人の芋の子同志は、いっこう面白くもない顔つきして、横目と横目で、お互いの鼻の恰好などを見合っていた。
市松の親も、以前は侍で、信濃福島の出であった。
親の新左衛門は、尾州二寺へ移住して、桶大工を業とし、
――結句、町人が気らく。
と、何の野望も抱かず、桶のそこを叩いていたが、子の市松は、幼少から烈しい気性だったので、
「どこか、良い縁故はないものか。厩者でも、台所働きでも、武家奉公でさえあれば、どこへでもやるが」
と、その腕白をもてあまして、日頃から心がけていた。
すると、市松が、ことし十四になったばかりの正月、蟹江川の支流で、他家の中間を斬った。
正月の酒にたべ酔って、橋のたもとに寝ていた足軽の足を、遊びに熱していた市松が過って踏みつけたのである。
足軽は怒って、
「この小僧め」
と、市松をつかまえてひどく蹴とばした。
市松は、頭をかかえて、散々に弄ばれていたが、やがて、切れた凧のように、わが家へすッ飛んで来ると、父親が細工場で使っている刀の折れを鉈にしたのを持って、また出て行った。