轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

自分を苦諫して自刃した平手中務のためには、さすがに政秀寺まで建立してやった。だが、父の霊前に手を合わせたりすることは、信心ぎらいといってよいほどした例しがなかった。家臣たちも、そんな姿の信長を平常に見ることはほとんどなかった。

けれど、石となった父に会うと、彼はただ掌を合わせただけではいられなかった。痴狂児の本性に返ったように、石へ呼びかけ、石へ向ってつい泣いてしまうのだった。

故に、信長はそんな愚かさを、家臣たちに見せなかった。見えない遠くまで遠ざけて、今もただひとり祖先を拝した。

初鴉の高音に、木々の梢は、紅を映しかけていた。

元朝の例をすまして、信長が本曲輪の広庭を、大玄関のほうへ迂回して来ると、中門あたりからその辺まで、埴輪土器のような泥にまみれた武将とその部下が、暁天の下に、白い息を髯に凍らせて、粛然と整列していた。

「…………」

信長のすがたを見ると、将兵の列は、ざぐと、具足ひびきを揃えて頭を下げた。

「大儀」

信長もいう。

そして、犒った。

「はやく休息するがよい。そして暢々、正月をいたすがよい」

これは明けて去年の何月かに美濃へ向けて出陣した後、そのまま木曾川の東岸に長陣していたのが、年暮に帰還を命じられ、ちょうどその朝未明に帰城して来たものであった。