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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
03 第三分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页
摂河泉の村々や、山地へかくれた三好松永の残党や、その与党たちだった。
極く近い地では、山城の乙訓郡青龍寺の城に、岩成主税介。
高槻城には入江左近。
武庫郡の小清水には篠原右京。
富田の普門寺城には細川掃部介。
そのほか、池田の池田城に池田筑後守とか、尼ヶ崎の荒木村重とか、河内の三好下野、同笑岩入道とか、遠くは大和の信貴山の多門城に、なお蟠踞している松永弾正久秀などまで、敵地を見やれば、彼が踏破した土地や洛中洛外の面積よりは、遥かに広い地域にわたっていた。
もちろんそれらの敵は、隙さえあれば、一挙、京師をついて、軍旅の織田方を殲滅せんと、日々夜々、虚を窺っているものだった。
「尼ヶ崎の荒木村重という敵方の将が、平服にて、しかもただ一名、木下殿に会いたいとて訪ねて参られましたが、なにかご存じのあることにございましょうか」
折ふし、こんどは、藤吉郎への取次であった。
取次へは返辞もせずに、藤吉郎は信長のほうへ手をつかえた。
「ちょっと、お眼通りをいただけましょうか」
「誰に」
「私を訪ねて来た荒木村重に――でござります」
「敵の将と、そちはいつ内通していたか」
信長は微笑する。