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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

また、卑しく媚びもせず、

「敵ながら、近年のお働きぶりは、治郎左衛門も、よそながら感じ入ってござる」

とか、

「初めて、富田の正徳寺で、お姿を見た折は、お十六ぐらいな、腕白の殿と見申したが、今日、小牧のお城へ来て、一瞥いたすに、士規整然として、以前の世評とは打って変った御家政ぶり、近年の隆々たるお勢いも、故あるかなと、思いあたってござる」

とか、雑談ぶりも、対等の人とはなすような態度であった。

嫌味がない。

虚心坦懐である。

猛勇一方のみでなく、人がらもなかなかいい。藤吉郎は、そう思って、治郎左衛門をながめていたが、

「追って、日を改めて、またゆるゆる御見に入ろう。今日は信長も多事なれば」

と、信長はあっさり会見を終って立ってしまった。

そして後から、藤吉郎だけを、奥へ召し入れて、何か密かに云い渡した。

何をいわれて来たか、藤吉郎の顔いろは、ひどく困惑していた。

だが、治郎左衛門には、何も告げず、その夜は、自分が歓待役となって、小牧山に一夜を明かし、

「いずれ詳しいことは、立ち帰ってから」

と、ふたたび彼を伴って、自分の居城洲股へさして行った。

洲股の城へ帰ると、