轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 页

青空文庫

どんな芝居をやってみたいかと云うので、皿屋敷の菊と云う役、どんどろ大師のお弓、それからカチュウシャのようなのとならべたててみる。きれいな幕が見える。お客さんが手を叩く。なんなら、二階から手紙を読むお軽もいい。菊次郎と云う女形の美しい姿をおぼえているので、私の空想は自由自在だ。菊次郎も松助も、左団次もこの男は何も知らない。

いっしょに遊びたいと云ったけれど、私はもう、芝居者のような気持ちで、気が浮かないから厭だと云って立ちあがった。

急に遊びたいなんておかしいじゃないのとさっさと階下へ降りると、女中が「あら、おそばが来ましたよ」と云った。ざるそばの赤うるしのまるい笊が重ねてあったが、にっこり笑って戸外へ出た。傘をさすのも忘れて雨の中を歩く。ごうごうと電車の音ばかり。四方八方電車の唸りだ。

いやに、赤うるしのざるそばの重ねたのが眼についてはなれない。四つもあの男はそばを食べるのかしら……。そばが食べたいな。

巷に雨の降るごとく、何処かの誰かがうたった。重たい雨。厭な雨。不安になって来る雨。リンカクのない雨。空想的になる雨。貧乏な雨。夜店の出ない雨。首をくくりたくなる雨。