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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

長谷川時雨『新編 近代美人伝 (下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:市川九女八、江木欣々女史、遠藤(岩野)清子、大塚楠緒子、九条武子、朱絃舎浜子、田沢稲船、柳原燁子(白蓮)、モルガンお雪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 页

青空文庫

「こんなにスローモーションでは堪りません。蛇の生殺しというものです。それというのも、お雪さんの心がぐらついているからです。わたしは死にます。」

それは全く真剣だったので、お雪は途方に暮れてしまった。

「あなたを、そんなに苦しめるのもあたしからですから。」

と、止めていたお雪の方がヒステリックになって、川の岸に立った。どっちたたずの身の、やる瀬なさに、身を投げて死んでしまおうとしたのだ。

顧問博士もびっくらしたのであろう。早速四万円を取り寄せることになった。

そんなこんなが、古風な祇園町の廓中を震撼させた。

「まあ、お雪はんのこと聞きなはったか?」

と、寄るとさわるとその噂だ。

「四万円だっせ。」

豪儀なことや、という女もあれば、あんなに厭がってたのだから、あてが代っても好いというふうになっていった。

「ようおすな、四万円。」

「そうどすな、悪うおへんな。」

花柳界ばかりではなくなった。京都、大阪、東京――全国的な話題になった。

「噂が立ってしまってから、打明るのは愁いが、あて、どうしたら好いのか――」

お雪はある日、末はこの人の夫人にと、はかない望みを抱いていた、情人の机のかたわらに、身をすくめて坐っていた。