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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
長谷川時雨『新編 近代美人伝 (下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:市川九女八、江木欣々女史、遠藤(岩野)清子、大塚楠緒子、九条武子、朱絃舎浜子、田沢稲船、柳原燁子(白蓮)、モルガンお雪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 页
「僕はきいていたよ。君の出世を悦んでいるくらいだ。」
と、二十九歳になる、京大法科に通っている、鹿児島生れの、眉目秀麗な、秀才はいった。
「僕に尽してくれたのは有難く思っているが、果して、君と一緒になれるかどうかは約束出きないし、今、君がどうしろといったって、どうにもなりはしない。君は行く方が好い。」
お雪はその場合、死のうといわれたら、当惑するには違いなかったでもあろうが、そんなふうに、愛人が理智的にいってくれるのが、突っぱなされたようにさびしかった。
説明のしようのない、ただ侘しさ――お雪の心に残っているものが、心の中で清算しきれないうちに、結婚予定は進んでいった。
四万円は結納金ということになった。お雪は完全に妓籍を脱したのだ。
世間というものはおかしなもので、胡弓芸妓のお雪も、さほどパッとした存在ではなかったのに、モルガン根引きばなしが起ってから、メキメキ売れ出してきた。
しかも、だんだん金高が騰上ってゆくのにしたがって、人気が上っていって、一流のお茶やさんから引っぱりだこにされていた。勿論、一流のお客さんたちは、評判になった妓の顔も知らないとあっては恥辱とばかりに、なんでもかんでも呼んで来いということになる。