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しんさいゆうき
新西遊記
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第十九号新春小説集」1950(昭和25)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,654 字 · 52 页
降生的に法皇の位をつぐことになっている。
法皇のなかには、臨終の床でこんどは何村の某の子になって生れるから、その子をおれだと思えと遺言して死ぬ用意のいいのもあるが、そうでないと、法皇が息をひきとった時間に生れた子供を手分けして探す。一人だけであってくれればこれに越したことはないが、三人も四人もいると、いるだけの子供を候補者に指定して五歳になるのを待ち、子供の名を書いた紙を繭玉に封じこんで金ピカの甕に入れ、督弁政務使が象牙の箸で繭玉を一つつまみだす。その子供がつぎの法皇になるのである。
法皇えらびは西蔵ではもっとも厳粛な儀式になっているが、といって絶対に掛引がないとは断言できない。自分の子供が法皇になると、一族のうるおいはたいへんなものだから、政務使や大参事に莫大な袖の下をつかい、自分の子供の名を挾みだしてもらえるように奔走する。
幼王が定年に達するまで副王が摂政するが、その十何年間は、閣僚や高官にとって、なによりありがたい書入れ時になる。副王にはなんの権力も与えられていないので、自分たちでいい加減な政治をとり、思う存分に私腹を肥すことができるからである。