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しんさいゆうき

新西遊記

久生 十蘭

「別冊文藝春秋 第十九号新春小説集」1950(昭和25)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,654 字 · 52 页

青空文庫

ラマ(喇嘛)教は、神力加持を説く密教(仏教の一流派)を精霊信仰の西蔵の原宗教(シャマニズムの一種)に結びつけ、輪廻と転生を信じ、超自然の神秘力に帰依する多神教の秘密咒教である。ラマ教の教理によると、人間の身体は地火風水の四つの要素からできていることになっている。したがって死んでもとのかたちに還元するにも、地、火、風、水の四つの道があるが、死体は穢れの最上のものなので、土葬して汚穢がながく地の下に残るのを好まない。火葬がいちばんいいのだが、樹林がともしくて燃料に苦しんでいる国柄だから、いきおい水葬か風葬ということになる。水葬は河に流すのだが、ただ投げこむのではない。手を斬り足を斬り、形のないまでにバラバラにして投げる。そのほうが魚が食いやすいのだという。風葬というのは、犬か鷲に食わせることで、岩山の平らなところへ担ぎあげ、肉は肉、骨は骨にして、石で叩いて手で捏ね、すさまじい肉団子をこしらえ、手も洗わずに恬然たる顔で茶を飲んでいる。

ラマ教徒はすべて激越な狂信者で、一種独得のクリュオーテシスム(加虐性)については、鎖国前一七〇六年に入蔵した伊太利の耶蘇会士イッポリート・デシデリが、「思い出すだけでも身の毛がよだつ」