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しんていきららざか

新訂雲母阪

直木 三十五

「文藝春秋」文藝春秋、1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,792 字 · 12 页

青空文庫

「あの夜、佐々木の旦那様もお越しになりまして――」

甚七は少しずつ糸がほぐれて来たように感じたが、それと共に、人生は何うしてこう巧に食いちがって行くものか――いくら食いちがっても、お新を探すのが、何よりも第一だと思った。その時、主婦が

「もしか、見えたらこれを渡してくれとのことで。」

と、手紙をもってきた。それには

「佐々木が、山田と口論して、山田が先に戻ったこと、その、山田が、お新、来馬も可哀そうにとんだぬれ衣をきせて、と云ったこと、それでいろ/\と山田をさぐると、佐々木の金入をもっていた事、この金入を証拠としてあかりをお立てになったら、妾は鳥追となって江戸へ下りますがその金入はもっておりますから、一日に一度はきっと浅草の観音へ行くことにして、こゝへ来て下さればお目にかゝります。」

甚七は礼を云うと共に、再び足を東へ向けようとした。お俊もお新も、世の中の女というものは、男より何うしてこんなに――利口で、美しく――と、思って行く時

「来馬。」

と、声がした。

「誰だ。」

と云うと共に、引組まれた。だが、何うにか抜けてひた走りに、一刻でも早くお新に、それからお俊に――そう思ってもう大丈夫と信じていても猶走っていた。