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たびだち
旅だち
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,059 字 · 24 页
まごまごしてる変な人だと思ったら……。」
洋子は敏子を押し出すように廊下に連れ出しました。それから広間に駆け込んで暫くたってから、こんどは落着いた様子で出て来ました。そして先に立って階段を降りて、街路に出ました。
「お忙しいんじゃありませんの。」と敏子は尋ねました。
「ええ、とても忙しいのよ。」
「そんなら、ただお寄りしただけですから、また……。」
「いいのよ。お茶でも飲みましょうよ。とても忙しいんだから、少しはゆっくり遊んだって、構わないわ。」
洋子は笑って、それからまだにこにこしていました。その側で、敏子はなんだか心が重く沈んでくる思いをしました。
コーヒーにちょっとしたお菓子の、狭い店がありました。その片隅に二人は席取りました。
洋子は眼をくるりと動かして、それを敏子の顔に据えると、揶揄するように言いました。
「結婚のお話、どうなったの。済んだの。」
敏子はただ頭を振りました。
「では、進行してるの。」
「いいえ、打っちゃってるだけ……。それよりか、あたし、昔のいろんなことが思いだされて、子供の頃に戻ったような気がして、どうしたのかしら……。」
「センチメンタリズム……。