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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

佐々木味津三『旗本退屈男』。同一底本的分册已合并为一书。收入:旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 页

青空文庫

骨の固まらぬ者が左様に気取るものではない。そのヘゲタレとか申すは、食べ物の事かな」

「ちょッ、こいつ吐かしたな。ヘゲタレを知らねえような奴あヘゲタレなんだ。どなたのお道中だと思ってるんだ。珠数屋の大尽がお通りじゃねえか! 所司代様だっても関白様だっても、お大尽にゃ一目おく程の御威勢なんだ。どきなどきな。どいて小さくなっていりゃ文句はねえんだよ」

町人風情の葉ッ葉者が、武士を粗略にした雑言を吐いたばかりか、ききずてにならぬ事を言いながら、わが旗本退屈男を痩せ浪人ででもあるかのごとくに取扱って、遠慮会釈もなくぐいぐいとうしろに押しのけたので、いぶかりながらふり返って見眺めると、いかさま大道狭しと八九人の取り巻を周囲に集らせて、あたりに人なきごとく振舞いながら、傲然としてやって来たのは、一見して成り上がり者の分限者と思われる赤ら顔の卑しく肥った町人でした。しかも、その取り巻の中には、公卿侍か所司代付きか、それともどこかの藩のお留守居番か、いずれにしてもれっきとした二本差が四人までも平身低頭せんばかりにしながら集っているのです。――退屈男の口からは自ずと皮肉交りな冷笑がほころびました。