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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

佐々木味津三『旗本退屈男』。同一底本的分册已合并为一书。收入:旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男、旗本退屈男。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 240,656 字 · 478 页

青空文庫

ほら、ほら、のう不埒ないたずら共じゃ、早うつけ替えい」

とぼけて松平の御前は竿の方へ、土州侯は腰を低めてお駕籠の方へ、まことにどうもそのぐずり加減、ぐずられ加減の程のよさというものは、なんともかとも言いようがない。いやなになに、禅の修行代りでなと、いかにも空とぼけたことを言いながら、遠慮するごとくせざるごとく、鷹揚に手土産を御嘉納するあたり、おのずから品が備わって、むしろほほ笑みたい位です。――始終を眺めた退屈男は、えもいいがたいその飄逸ぶりに、悉く朗かになりながら、土州侯の行列が通り過ぎてしまったのを見すますと、腰低くつかつかと進みよって、いんぎんに呼びかけました。

「お付きの御坊主衆にまで申し入れまする。江戸旗本早乙女主水之介、松平の御前にお目通り願わしゅう存じまするが、いかがにござりましょう」

「なになに、旗本とな――」

声をきいて、源七郎君お自ら磊落そうにふり向くと、流れに垂れた釣竿をあやつりあやしつつ、じいッと退屈男をやや暫し見守っていたが、伯楽よく千里の馬を知るとはまさにこれです。

「ほほう、眉間に惚れ惚れと致す刀像が見ゆるな。何ぞ物を言いそうな向う傷じゃ。