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ひびのうつり
日々の映り
宮本 百合子
「文芸集団」(名古屋帝国大学医学部学生の同人誌)、1939(昭和14)年第1号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,131 字 · 16 页
重吉や生きていた乙女の良人が一緒の活動をしていた頃、二十歳をこしたばかりであった乙女は生活のために場末のカフェーにつとめていて、若い堅気な夫婦がその決心をかためたとき、乙女はひろ子のところへ着物のことで相談に来た。自分で来たというよりも、良人の勉が来させたという方が当っている。夫婦としての生活の感情などについても、ごく清潔なたちの勉が、男に媚る仕方などというものをまるで知らない素朴な若い妻を、そういう職業につかせる決心をした、その気持が、乙女を自分のところへよこしたことから、切なくひろ子には諒解された。勉がなくなった後、友子の心持にもひろ子の心持にも、残った乙女の暮しぶりに向けられていたにちがいない勉の懸念が映っていて、乙女が麻雀クラブにつとめはじめた時、ひろ子はその店のところへそれとなく行って見たりしたこともあった。ひろ子は、
「よく来たこと。きょうは――おそでの日?」
と、小柄な体を派手なセルにつつんで、胸高く赤い帯をしめてそこに座った乙女を眺めた。
「いつ旭川からかえったの?」
「もう一月ばっかしになるかしら。あっちへかえってもばっちゃんがうるさくて」