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ひはかがやけり

日は輝けり

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页

青空文庫

そして泣き伏している、娘の肩をやさしくだきながら、

「こんなことは、決して考えてはなりませんぞ。よくなるときには、だまっていても、如来様がなおして下さる。早まったことは、決しておしでないよ。ああほんに……」

とつぶやいて、頬に貼りついた、髪を掻き上げてやった。お咲の啜泣きに混って、孝之進の寝言が、高く聞えていた。

お咲の最初の試みは、かようにして失敗した。けれども、この失敗したということが、一層彼女の死に対する狂的な渇仰を燃え立たせたのである。

「死ねば何にも判らなくなる」

それだけが非常に彼女の、闘いつかれた心を誘惑したのであった。彼女は、一日中「どうしたら死ねるか?」ということを考えていた。

「どうしたら死ねる?」

天井や戸や窓を見まわした。けれども、人一人を死なすには、それ等はあまり扁平な形すぎる。終に彼女は自分の体までしらべ始めた。

「どうにかして、死ねないものだろうか?」

あっちこっち触っていた手先が、フト髪に触った。

その冷かに、滑っこい感じが、第一に彼女の注意を引いた。次いでその量、その……長さ! に思い至ったとき。

彼女は満足らしい微笑を洩した。