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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
そして、さっさと手早く、何の躊躇もなく、櫛を抜いた。ピンを取った。背中に散った髪を、一まとめにして、指の先でくるくるとよりをかけた。それからその端を持って、一杯に頸に巻きつけた。彼女は目を半眼にして、そろそろ、そろそろと力を入れて、締め始めた。
愉快な軽い圧……。ややそれよりも重苦しい圧……少し強い圧……かなり強い……圧。
お咲は顔が赤く、熱くなってきたのを感じた。
頭の方へ皆血が上って、顔中の血管が一本あまさず一杯パンパンになったようで、こわばる心持がする。耳がガンガンいう。息がつまって来た。心臓が破れそうに鼓動する、目が堅くなる……。
お咲は半夢中で、ゼイゼイしながら、手に力をこめた。
「もう一息!」
と、思った瞬間、
「お母さん※(感嘆符二つ、1-8-75)」
咲二の――夢寐にも忘られない咲二の声が彼女の耳元で叫んだ。
「お母さん※(感嘆符二つ、1-8-75)」
ハッとして手がゆるむと同時に、甘い、すがすがしい空気が、鼻や口から一時に流れこんだ。思わず大きな、深い溜息が出た。けれども、熱く火照って霞んだ彼女の眼に写るものは、相も変らぬ暗い四方と、落ちた髪道具、細く消え入りそうな自分の膝ばかりであった。