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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
――家中がどんなに、湿っぽく暗くなっているか解らない、これというのも皆あれのおかげだ。浩は金が欲しいと思った。二十円でもまとまった金があれば、今の皆の心がどんなに引き立てられるかしれないし、また姉にしろ、身を削るような涙をこぼさずとも済む。金があったらなあと、はっきりつぶやきそうにまで、ほんとうに強く彼は思った。けれども十五円ほか月に貰わない――それもようよう今年の四月から――で、貯蓄などは出来ないのに、二十円はおろか五円だって、右から左へ動く金は持っていない。今までだとて浩はもちろん、決して豊かな若者ではなかった。けれども金には――ただ本を買う場合を除いて――すべてのときかなり、さっぱりしていた。が、年を取り、衰えきったような父親が、苦しそうな思案に暮れているのを見ると、また、姉が啜泣きながら、「こんなに辛い思いをかけたり、自分でもするくらいなら、私ちょっとも癒りたくなんぞなかったわ」と云っているのを見ると、浩の心は乱された。どうにかしたいと思った。店で、帳簿に何万何千という金額を幾通りも幾通りも記入していると、浩には余り多過ぎて、平常ああやって通用している金なのだとは思えないような気がした。