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ひめくり
日めくり
壺井 栄
「群像」1963(昭和38)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,884 字 · 34 页
そんな思いにつながったフリージヤだったかもしれない。……
「あっ」
と元子は小さく叫んで立ちどまった。そしてうろうろとあたりを見まわしながら、文吉に、
「この道だわ。たしかに。向うにフミキリがあるでしょ。そこを渡って少しいくと左側に多喜二の家があった――」
その日夕刊で多喜二の死を知った元子は、まだ小さかったひろみをつれて、多喜二の母のいる家へかけつけたのだった。その道が、今、病院へいくこの同じ道であることに気がついたのも、フリージヤからの連想であった。たくさん集った多喜二の葬式の花をその時獄中にいた大勢の多喜二と同じ文化団体の人たちに差入れたのである。その中に文吉もいた。一輪ずつの赤いカーネーションにフリージヤを添え、差入れ者は多喜二の母の名にした。そうすることで、多喜二の死を知らせようとしたのだった。その思いつきは元子であり、そしてそれを刑務所に運んだのも並川元子であった。その時の元子はまだ小説などは書いていず、解放運動犠牲者として獄にとらわれていた文吉の家族として、文化団体の中の差入れ係をしていた。――
病院の玄関を入ると、まるで待ちうけてでもいたようにひろみがかけよってきて、