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にほんのにわ

日本の庭

室生 犀星

「日本の庭」1943(昭和18)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,450 字 · 5 页

青空文庫

純日本的な美しさの最も高いものは庭である。庭にはその知恵をうずめ、教養を匿して上に土を置いて誰にもわからぬようにしている。遠州や夢窓国師なぞは庭の学者であった。そうでない名もない庭作りの市井人が刻苦して作ったような庭に、匿された教養がある。

庭をつくるような人は陶器とか織物とか絵画とか彫刻とかは勿論、料理や木地やお茶や香道のあらゆるつながりが、実にその抜路に待ちかまえていることに、注意せずにいられない。結局精神的にもそうだが、あらゆる人間の感覚するところの高さ、品の好さ、匂いの深さにまで達しる心の用意がいることになる。人物ができていなければ庭の中にはいってゆけない、すくなくとも庭を手玉にとり、掌中に円めてみるような余裕が生じるまでは、人間として学ぶべきもののすべてを学んだ後でなければならぬような気がする。鉄のような精神的な健康もいるし、一茎の花にも心惹かれる柔かい詩人のたゆたいが要り、十人で引く石も指一本で動かす最後の仕上げにも、徹底的な勝利をも目ざしてその仕事につかねばならぬ。はいり込んで行けば生やさしいことは一つとして存在していない。この世界では、もうよかろうという言葉や、いい加減にしておこうということは、忌み嫌われる。