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にほんのにわ

日本の庭

室生 犀星

「日本の庭」1943(昭和18)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,450 字 · 5 页

青空文庫

花も石も、木の幹も、みなそれぞれに見る人の心につながって来る。見る人に物思いがあり人のことを考えているなら花も、木、石も物思いの美しさを加え、殖やしてくれる。建築、造園、教養、叡智、学問、そんなものに思いをひそめている人がいたらその人は庭をみながら柔かく教養、叡智の捌け口を、手つだってくれることに気づく。滝田樗蔭氏は脇息にもたれ庭を見ながら雑誌に書いて貰う小説家や評論家を頭でえらんでいたそうであるが、滝田氏でなくとも建築家や事業を目ざす人びとが、その仕事を庭を見ながら組立てることもあるだろう。戦国時代の主将が明日の戦いに思いをひそめるためには、どれだけ庭の静かさが必要だったかわからない。

私は最近庭には木も石もいらないような気がし出した。垣根だけあればいい、垣根だけを見て、あとは土、あるいは飛石を見るか、苔を見るようにして木というものはできるだけすくなくまた石もできるだけ少なくしたいと考えるようになった。何故かといえば、庭で最初に眼につくは垣根であり、垣根は表からも裏からも座敷からも見えるからである。垣がいい垣ならそれだけ見ておればいい、小さい市井の庭ならなお垣だけ見られるようにしたいと考えている。