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にほんのにわ
日本の庭
室生 犀星
「日本の庭」1943(昭和18)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,450 字 · 5 页
天下の名園を見つくした人にはもはや何もいらないはずであった。
私は旅行中ある山中の小径で、稚木にどん栗が五六粒実っている枝を見てどん栗というものの実っている枝を美しいと思い、その生長を楽しんで東京にかえる日にその枝を持ってかえろうと、散歩のみぎり毎朝眺めて通っていた。どん栗は青く、何の役にも立たないくせに日を趁うてふとり、愛情をささやくごとく枝の間にふくれて行った。
ある朝、もうそろそろ剪ってもどろうと、鋏を用意して行って見ると子供のいたずららしく、どん栗は※(「てへん+毟」、第4水準2-78-12)り取られて一粒もあとを止めなかった。私は枝を見間違えたかと思ってさがして見たが、やはり子供が※(「てへん+毟」、第4水準2-78-12)り取って行った枝であった。茫然として人なき山中にくやしく私は唇を噛んだのである。
(一九四三年「日本の庭」)