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にほんのみんしゅうと「にほんてきなるもの」

日本の民衆と「日本的なるもの」

戸坂 潤

「改造」1937(昭和12)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,821 字 · 18 页

青空文庫

現に日本の支配者は民衆に家族主義という醇風美俗を、日本的なものとして押しつける。それからすると、財産相続税の値上げなどはわが国体に反するという話である。殷鑑は遠くないのだ。

人々は民衆々々と云うが、民衆とは一体どういう概念なのか。私は之をまず第一に政治上の観念として理解すべきものだと考えているが之を文化上の問題にする時には、之とは全く別にでも考えなければならぬのだろうか。民衆は如何なる国に於ても階級性そのものを持っていると私は思うが、それとも民衆とは国内人口の総和というようなものででもあるのだろうか。或いは又日本の民衆に限って、外国の民衆とは別に、階級性を有たないとでもいうのだろうか。ここは大切な点なのだ。なぜというに、日本の民衆は何等の社会階級性を有たないという社会観が、今日の日本で実際に存在しているからだ。ではブルジョア文学者達の所謂民衆の観念は、恰もこの社会観にその論拠を求めるのだろうか。それともそんな論理臭い論拠などは要らないというのであるか。信念ででも行くか、肚ででも行くか。

日本の民衆が社会階級関係に於て、どういう役割を有っているか、又持たねばならぬか、ということが、日本民衆が何であるか、ということの、何より大事な第一の規定だ。