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あゆむ
日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)
戸田 豊子
戸田豊子『日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:歩む、鋳物工場。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,183 字 · 44 页
それから枕へ耳を圧しつけて、白い壁の方を向いた。
――私が愛したのはこのひとの健康な肉体だけなんだ、このひとはそれを平気で別の女に、相手が酌婦だろうが、社会主義者だろうが、変ったことじゃない。
――しかし、覚えておいで、こんな考え方は最も下等だ、泥沼だ、ボロ屑だってことを。
――しかし、とも子はも一度向き直った、――
「病気になってどんな気持がするか言ってごらん」
「そんなことを聞くひとがあるか。時間と金の浪費だもの困ることは解りきってるじゃないか。而しそれ以上のもんじゃないよ」
「私がもう愛してやらなかったらどうする?」
「煩いね、そんなことはさせないよ。あなたと僕については何も変ったことがないんだもの、病気が療りさえすりゃ問題がないじゃないか」
「エゴイスト、もう眠っちまってる」暫くして、とも子は相手の肩を揺った。「私がどんな女だか言ったげようか、世間の馬鹿女みたいに婦人科のご厄介になったり、眼のフチを黒ずませたり、ポケットへ挿入薬を入れて歩いたり、子供も産めない様な女になったりする位なら……そうね、恋愛なんか要らないわ、牛か馬の背中でもパカパカ叩いてやる方がはるかましよ、豚だけはもうご免だけど。