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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
風鈴
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,649 字 · 27 页
くやしいことと云いながら、津留はつと手を伸ばし、廂に吊ってある青銅の古雅な風鈴をはずして、そのまま窓框に腰をかけた。小松は妹の手からすぐにその風鈴をとりあげ、なんの積りもなく両手で弄びながら、ここへ来る途中からの続きらしい妹との会話をつづけた。
「……そうなのよ、なにもかも昔どおりなの、このお部屋にある箪笥もお鏡台も、お机もお文筥もお火桶も、昔のままの物が昔のままの場所にきちんと据えられて一寸も動かされない、そういう感じなんです」
「いったいお姉さまはそういうご性分なのね、それともう一つそう思うのだけれども、このお家には色彩というものが少ないのよ、武家だからという以上に、わたくしたちの髪かたちにしろ衣装にしろ、お部屋の調度にしろみんなじみなものくすんだ物ばかりで、娘らしい華やかさ、眼をたのしませるような色どりはまるで無かったのですもの」
「それはつまり若さが無かったことなのよ」
小松は風鈴をりりりりと鳴らしながらそう云った、
「わたくしがそう気づいたのは百樹へとついで、あちらの義妹たちの日常を見てからだけれど、世間の娘たちがどういう暮しぶりをしているかということを知って、おどろくことが少なくありませんでしたよ」