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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
風鈴
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,649 字 · 27 页
一
一
妹たちが来たとき弥生はちょうど独りだった。良人の三右衛門はまだお城から下らないし、与一郎も稽古所から帰っていなかった。二人を自分の部屋へみちびいた弥生は縫いかけていた物を片つけ、縁側に面した障子をあけた。妹たちがきっと庭を見るだろうと思ったので、けれども妹たちはなにやら浮き浮きしていて、姉のこころづかいなとまるで眼にいらぬようすだった。
「きょうはお姉さまにご謀反をおすすめしにまいりました」
そう云いながら部屋へはいって来た小松は、そのままつかつかと西側の小窓のそばへゆき、明り障子をあけて、
「そらわたくしの勝ですよ」
とうしろから来る津留にふり返った、
「このとおり風鈴はちゃんと此処にかかってございます」
「まあほんとうね、呆れたこと」
津留は中の姉の背へかぶさるようにした、
「わたくしもうとうに無いものとばかり思っていました、それではなにもかも元の儘ですのね」
「なにを感心しておいでなの」
弥生は二人の席を設けながら訊いた、
「その風鈴がどうしたんですか」
「津留さんと賭けをしたんですの、風鈴がまだ此処に吊ってあるかどうかって」
「おかげでわたくし青貝の櫛を一枚そん致しました」