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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
笄堀
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,409 字 · 23 页
六
ここに忍城の不落の要素があったのだ、八ヶ城六千余騎の兵をあつめた館林がわずか三日で開城したのに、忍がこれだけめざましく戦いつつ三十余日も守りとおしたのは、将も兵も民も、老若男女がぜんぶ心をひとつにして戦ったことによる、ことに城の内外にある民たちの協力がもっとも大きくものをいった。おんなわらべとひと口にいうけれども、これらがいちど心の底からふるい立ち、力をあわせてたたかえばこれだけのみごとな戦ができる、石田軍三万の兵力は、つまりそのちからのまえに手も足も出なかったのだ。その点だけでも、忍城の戦は多くの合戦記のなかで特異の頁を占める価値があるであろう。……かくてついに六月は終った。
六
まぶしいような七月の日光が、矢狭間からさしこんでいた。
忍城本丸の矢倉に、真名女は靱負之助とただふたり対坐していた。数日まえ、小田原から良人氏長の手紙が届いたのである、氏長は連歌の友である山城守山中長俊のとりなしで、秀吉と和をむすび、その軍門にくだったのである、そして忍をも開城するようにと云いおくって来たのだ。
「城の将兵にはとがめなし、私財もそのまま退城してよく、また領民たちは戦前どおり居所財物を安堵させる」