轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
二十三年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,170 字 · 22 页
それは奥さまが亡くなるときの、辛いお気持を見たからです、まだ乳も離れぬ坊さまと、世事に疎い旦那さまを遺して死ななければならない、それがどんなにお辛いことか、私には骨に徹るほどよくわかりました、女同志でなければわからない辛さが、私には熟くわかったのです、「ああ……」主従の義理でもなく、御恩に報ゆるためでもありませんでした、奥さまのお辛い気持を身に耐えた私は心のなかで奥さまにお誓い申したのです、旦那さまと坊さまのことはおかやがおひきうけ申しますと、「ああ……」それだけの言葉が今、おかやの胸いっぱいに溢れているのだ、そしてそれを口に語ろうとするのだが、出るものは「ああ」という空しい喉声ばかりだった。
「ああ」おかやは自分で自分を訝るように眼をみひらいた、「ああ、……ああ、……」「おかや、おかや」牧二郎は思わず叫び声をあげた、「……おまえ口が利けないのか」「…………」彼女は大きくみひらいた眼で牧二郎を見あげた「…………」それから不意に両手で面を隠し、崩れるように前へ俯伏した。
二十三年というとしつきはかりそめのものではない、そうだ、おかやは唖者になっていた。