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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
二十三年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,170 字 · 22 页
三
「ともかく人を集めて捜さなければ……」彼はそう云い、村人たちの助力を求めるために出ていった。けれどその必要はなかった、靱負が用水堀に沿った堤道へ出てゆくと、向うから顔見知りの村人たち四五人の者――が、おかやを戸板に載せて運んで来るのと会った。多助はなにか叫びながらそっちへ駆けつけていった、靱負はそこへ棒立になったが、すぐに踵を返して家の中へ戻った。
「八幡様の崖の下に倒れていたのです」村人たちは口ぐちに云った、「……どうかして崖から墜ちたのでしょう、みつけた時は死んだように息も止まっておりました」「それでもたいした怪我はしていないようです、息もすぐ吹返しましたし、別に血の出ているところもありませんから」南村にいる名庵という医者にはすぐ知らせて来た、もう間もなく此処へ来るであろう。村人たちはこう語りながら、半身土まみれになったおかやの躯を家の中へ担ぎ入れて来た。
三
馬で駆けつけた医者は、必要と思われる有らゆる手当を試みた。外傷もなく骨折もないようだった、意識も恢復して、頻りに起きようとする、結局どこにも故障はないのだが、然し、……おかやは口が利けなくなっていた。