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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
糸車
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,187 字 · 24 页
席は広間に設けられた、かけつらねた燭台はまばゆいほど明るく、大和絵を描いた屏風の丹青も浮くばかり美しかった。幾つもの火桶でうっとりするほど暖まった部屋、贅沢といってもよいくらい品数の多い色とりどりの食膳、そしてなんの苦労もなく憂いも悲しみも知らない親子兄弟の、なごやかに団欒をたのしむありさま、――これが自分のほんとうの家なのだ、ここにいる人たちが自分の生みの親であり、血肉をわけた兄弟たちだ、いま坐っているこの席は誰のものでもなく正しく自分の席なのだ。お高はそう思いながら、できるだけすなおな気持でその室の空気に順応しようとした。けれども燭台は明るすぎ、絵屏風はあまりに美しく絢爛で、いかにもおちつきにくく眩しかった、数かずの料理もいずれは高価な材料と念いりな割烹によるものであろうが、お高にはなにやらよそよそしくて、美味しいという気持はおこらない、そしてその一つ一つが松代の家のことに思い比べられ、しめつけられるように胸が痛んだ。
切り貼りをした障子、古びた襖、茶色になってへりの擦れている畳や、凍み割れのある歪んだ柱、煤けた行燈の光にうつしだされるあの狭い、貧しい部屋のありさまがまざまざとみえる、乏しい炭をまるで劬るように使うあの火桶ひとつでは、冷えのきびしい今宵はどんなにか寒いことだろう、依田の父と松之助は、