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ファルスについて
日本文化私観 坂口安吾エッセイ選
坂口安吾『日本文化私観 坂口安吾エッセイ選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:FARCE に就て、神童でなかったラムボオの詩、花田清輝論、スタンダアルの文体、大阪の反逆。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 页
この大いなる矛盾のおかげで、この箆棒な儚なさのおかげで、兎も角も豚でなく、蟻でなく、幸いにして人である、と言うようなものである、人間というものは。
単に「形が無い」ということだけで、現実と非現実とが区別せられて堪まろうものではないのだ。「感じる」ということ、感じられる世界の実在すること、そして、感じられる世界が私達にとってこれ程も強い現実であること、此処に実感を持つことの出来ない人々は、芸術のスペシアリテの中へ大胆な足を踏み入れてはならない。
ファルスとは、最も微妙に、この人間の「観念」の中に踊りを踊る妖精である。現実としての空想の――ここまでは紛れもなく現実であるが、ここから先へ一歩を踏み外せば本当の「意味無し」になるという、斯様な、喜びや悲しみや歎きや夢や嚔やムニャムニャや、凡有ゆる物の混沌の、凡有ゆる物の矛盾の、それら全ての最頂点に於て、羽目を外して乱痴気騒ぎを演ずるところの愛すべき怪物が、愛すべき王様が、即ち紛れもなくファルスである。知り得ると知り得ないとを問わず、人間能力の可能の世界に於て、凡有ゆる翼を拡げきって空騒ぎをやらかしてやろうという、人間それ自身の儚なさのように、之も亦儚ない代物には違いないが、然りといえども、人間それ自身が現実である限りは、決して現実から羽目を外していないところの、