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日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

坂口安吾『日本文化私観 坂口安吾エッセイ選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:FARCE に就て、神童でなかったラムボオの詩、花田清輝論、スタンダアルの文体、大阪の反逆。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 页

青空文庫

神童でなかったラムボオの詩

私は中原が訳すまで、ラムボオに『学校時代の詩』というもののあることを知らなかった。仏蘭西の全集には載っていないものである。日本流に数えて十五歳から十七歳までの作品らしい。

私は今までラムボオは神童だったに違いないと考えていたが、この詩集を読んでみると私の考えがまちがっていたことに気付いた。大人びたところがまるでない。その上、神童らしい神童の鋭さもない。だから後年やや長じて、ひとたび懐疑の真底へぶつかるや、まっさかさまに地獄へ墜落していった荒々しいのたうちが尚よく分った気がした。実を言うと、私は神童なぞは凡そ面白くもないのである。

此の詩集の時代のラムボオは平凡な少年詩人だったと言っていい。これは悪い意味に言っているのではなく、寧ろ後年の振幅を理解させるに充分なほど大きな平凡であったとの意である。十五歳の詩は全く十五歳の感傷に終始しているし、十六歳の最初の詩は甚だ厭世的であるけれども、それは形が厭世的であるだけで深さも鋭さも全く十六歳の少年そのものである。鋭い狙いもない。いわば彼のこの時代は少年詩人的な好奇心がすばらしく旺盛であるだけである。感覚も平凡であるし神経はむしろ鈍い。