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ファルスについて
日本文化私観 坂口安吾エッセイ選
坂口安吾『日本文化私観 坂口安吾エッセイ選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:FARCE に就て、神童でなかったラムボオの詩、花田清輝論、スタンダアルの文体、大阪の反逆。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 页
「感じる」、あくまで唯「感じる」――という世界である。
斯様にして、ファルスは、その本来の面目として、全的に人を肯定しようとする結果、いきおい人を性格的には取扱わずに、本質的に取扱うこととなり、結局、甚しく概念的となる場合が多い。そのために人物は概ね類型的となり、筋も亦単純で大概は似たり寄ったりのものであるし、更に又、その対話の方法や、洒落や、プローズの文章法なぞも、国別に由って特別の相違らしいものを見出すことは出来ないようである。
類型的に取扱われている此等の人物の、特に典型らしいものを一二挙げると、例えばファルスの人物は、概ね「拙者は偉い」とか「拙者はあのこに惚れられている」なぞと自惚れている。そのくせ結局、偉くもなければ智者でもなく惚れられてもいない。ファルスの作者というものは、作中の人物を一列一体の例外無しに散々な目に会わすのが大好きで、自惚れる奴自惚れない奴に拘りなく、一人として偉いが偉いで、智者が智者で、終る奴はいないのである。あいつよりこいつの方が少しは悧巧であろうという、その多少の標準でさえ、ファルスは決して読者に示そうとはしないものだ。