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にほんぶんかしかん

日本文化私観

坂口 安吾

「現代文学 第五巻第三号」1942(昭和17)年2月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,816 字 · 43 页

青空文庫

いつかベーブ・ルースの一行を見た時には、流石に違った感じであった。板についたスタンド・プレーは場を圧し、グランドの広さが目立たないのである。グランドを圧倒しきれなくとも、グランドと対等ではあった。

別に身体のせいではない。力士といえども大男ばかりではないのだ。又、必ずしも、技術のせいでもないだろう。いわば、伝統の貫禄だ。それあるがために、土俵を圧し、国技館の大建築を圧し、数万の観衆を圧している。然しながら、伝統の貫禄だけでは、永遠の生命を維持することはできないのだ。舞妓のキモノがダンスホールを圧倒し、力士の儀礼が国技館を圧倒しても、伝統の貫禄だけで、舞妓や力士が永遠の生命を維持するわけにはゆかない。貫禄を維持するだけの実質がなければ、やがては亡びる外に仕方がない。問題は、伝統や貫禄ではなく、実質だ。

伏見に部屋を見つけるまで、隠岐の別宅に三週間ぐらい泊っていたが、隠岐の別宅は嵯峨にあって、京都の空は晴れていても、愛宕山が雪をよび、このあたりでは毎日雪がちらつくのだった。隠岐の別宅から三十間ぐらいの所に、不思議な神社があった。車折神社というのだが、清原のなにがしという多分学者らしい人を祀っているくせに、非常に露骨な金儲けの神様なのである。