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にほんぶんかしかん
日本文化私観
「現代文学 第五巻第三号」1942(昭和17)年2月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,816 字 · 43 页
利根川に沿うた小さな町で、トンカツ屋とソバ屋の外に食堂がなく、僕は毎日トンカツを食い、半年目には遂に全くうんざりしたが、僕は大概一ヶ月に二回ずつ東京へでて、酔っ払って帰る習慣であった。尤も、町にも酒屋はある。然し、オデン屋というようなものはなく、普通の酒屋で、框へ腰かけてコップ酒をのむのである。これを「トンパチ」と言い、「当八」の意だそうである。即ち一升がコップ八杯にしか当らぬ。つまり、一合以上なみなみとあり、盛りがいいという意味なのである。村の百姓達は「トンパチやんべいか」と言う。勿論僕は愛用したが、一杯十五銭だったり、十七銭だったり、日によってその時の仕入れ値段で区々だったが、東京から来る友達は顔をしかめて飲んでいる。
この町から上野まで五十六分しかかからぬのだが、利根川、江戸川、荒川という三ツの大きな川を越え、その一つの川岸に小菅刑務所があった。汽車はこの大きな近代風の建築物を眺めて走るのである。非常に高いコンクリートの塀がそびえ、獄舎は堂々と翼を張って十字の形にひろがり十字の中心交叉点に大工場の煙突よりも高々とデコボコの見張の塔が突立っている。