轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

にほんぶんかしかん

日本文化私観

坂口 安吾

「現代文学 第五巻第三号」1942(昭和17)年2月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,816 字 · 43 页

青空文庫

勿論、この大建築物には一ヶ所の美的装飾というものもなく、どこから見ても刑務所然としており、刑務所以外の何物でも有り得ない構えなのだが、不思議に心を惹かれる眺めである。

それは刑務所の観念と結びつき、その威圧的なもので僕の心に迫るのとは様子が違う。むしろ、懐しいような気持である。つまり、結局、どこかしら、その美しさで僕の心を惹いているのだ。利根川の風景も、手賀沼も、この刑務所ほど僕の心を惹くことがなかった。いったい、ほんとに美しいのかしら、と、僕は時々考えた。

これに似た他の経験が、もう一つ、ハッキリ心に残っている。

もう、十数年の昔になる。その頃はまだ学生で、僕は酒も飲まない時だが、友人達と始めて同人雑誌をだし、酒を飲まないから、勢い、そぞろ歩きをしながら五時間六時間と議論をつづけることになる。そのため、足の向くままに、実に諸方の道を歩いた。深夜になり、深夜でなくとも頻りと警官に訊問されたが、左翼運動の旺な時代で、徹底的に小うるさく訊問された。大体、深夜に数人で歩きながら、酒も飲んでいないというのが、却って怪しまれる種であった。そういう次第で心を改め大酒飲みになった訳でもないのだが。