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にっき

日記

宮本 百合子

25 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,692 字 · 10 页

青空文庫

そして、お宮へ戻るとき、村の男の子たちがお宮の石段に蝋燭を並べて待ちかまえていて、行列が見えると一斉に灯をつける。その灯の色は夏の暮れがたに美しく輝く。

今年の行列は、てんでんばらばらになってしまって、丁度退け時の人波の間にもまれ、羽織着の中爺さんが気のない日やけ顔で大きいこしらえものの矛だの、※(「くさかんむり/瓜」、第3水準1-90-73)だのをかついで通る。どこにもお祭の気分はない。年々めぐっていた田の大部分は、厚く高い塀の中に埋められて、豊作を祈るという素朴な村の感情は、製材所のおかみさんが椅子テーブルで帳づけをするような村の昨今の現実的な生活気分に場所をゆずってしまった。景気はもっと近代化した波動をあからさまにして人々をうっている。

夜線の方が灯らないそうで、門口へ出て見たら暗い往来に、織るような人通りである。若いものが溢れている。暗い往来の七八間さきの何かの店頭から煌々とそこばかりに灯がさしていて、そこの前の材木のところで白い浴衣の若い男が一人、格別仲間もなさそうに手旗信号の練習をしている。店からの灯が、動く浴衣の袂だの手だの、その男の体の前半分をくっきり、夏の夜らしく際立たしている。