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にっき
日記
宮本 百合子
28 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,467 字 · 14 页
いろいろに動揺して故国に向っている感情。
「どういうもんでしょう、国体論というような本は、かくしておかんけりゃいけないものでしょうか」
やがて下車駅の京都近くになって前の大佐殿にきく。「われわれはあくまで国体護持に終始する」答は一本棒の如し。つまり答えになっていない。自分解説する。
「そんなことしなくていいでしょう、どういう本はよんではいけないという狭さがあったから、国体論までいかがわしい本が出たんです。これ迄主観的によまれていたのなら、客観的に世界的な眼でよみ直さなくちゃいけないでしょう」この卑屈さがこれ迄の日本の戦時教育の姿だ。
京都が近づくにつれて、胸一杯という風で段々陽気さを失い深くうなだれている。
この列車は下関行の只一本の急行だが、電燈の工合わるくてパッとついて消えパッパッとついて消える。そして遂に暗闇で(大阪以西)走る。
止るどの駅も破壊されている。東海道全線そして山陽線も。広島、岩国ひどい。岩国の駅はなくて板で踏場をこしらえてある。(ロシアの田舎駅のように)そこへ人糞がところどころ落ちている。窓から旅客が夜にまぎれてして行くものらしい。