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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

10 勝川花菊の一生

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,120 字 · 15 页

青空文庫

彼女の手許の召使いだった姪は、彼女の添にいたからこそ売出しの新商売の人の後妻にもなれたのだ、という誇りをもって――

勝川のおばさんという名と一所に出るのは佐兵衛さんと、も一人お角力という人だった。いま思えば三角関係だったのでもあろう。佐兵衛さんは旦那で、勝川お蝶は権妻上り、関取××は出入りの角力、そして佐兵衛さんはさしもの大資産を摺ってしまってもお蝶さんと離れず、角力は御贔負さきがペシャンコになってしまっても捨てず、だんだん微禄はしたが至極平和にくらした。

海上暴風雨のためにいつもは房州へはいるはずの、仙台米の積船が、鰯のとれるので名高い九十九里の銚子の浜へはいった。江戸仙台藩の蔵屋敷からは中沢某という侍が銚子へ出張した。

中沢という侍は、幕臣湯川金左衛門邦純とならない前の、木魚の顔のおじいさんの姓である。

浜方は船が一艘這入っても賑わう。まして仙台米をうんと積んだ金船が何艘となくはいってきたのだ。もともとお蔵屋敷の侍といえば、武士であって半町人のような、金づかいのきれいな物毎に行きわたった世馴れた人が選まれ、金座、銀座、お蔵前などの大町人や諸役人と同様その時分の社交人である。