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はやみみさんじとりものききがき

早耳三次捕物聞書

林 不忘

02 うし紅珊瑚

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,050 字 · 20 页

青空文庫

その間に、女の客も二、三人あった。けれど、それらしい女は影も形も見せなかった。三次は焦れだした。ことによると大事を踏んで、午後までには来ないかもしれない、もうここらで切上げようかしら、こうも思ってはみたものの、死んだお藤や、伊助の狂乱を考えると、ここまで漕ぎつけて打ち切ることは、さすがに三次にはできなかった。

「へん、こうなったら根較べだ。」

心の中で独言をいって、三次はいっそう腰を落着けた。黙ってじいと事件の連鎖を見つめているうちに、三次には万事がわかったような気がした。今はただ、三次は待っていた。

四

雨だった。いつの間にか雨に変っていた。冷たい雨が音を立てて、沛然と八百八町を叩いていた。

「好いお湿りだ、と言いてえが、これじゃあ道路が泥るんでやりきれねえ。いや、降りやがる、ふりやがる――豪気なもんだ。」

こう言って三次が、煙草の火玉を土間へ吹いた時、

「御免なさい。」

という優しい声がして、おりから煽る横降りを細身の蛇の目で避けながら、唐桟ずくめの遊人ふうの若い男がはいって来た。三次はそっちを一眼見たきり、気にも留めずにいると、

「女物の羽織紐を一つ見せて下さい。