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はやみみさんじとりものききがき
早耳三次捕物聞書
林 不忘
02 うし紅珊瑚
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,050 字 · 20 页
」
と言っている。
嫌な奴だな、と思いながら、顳へ当てた手の指の間から、三次、それとなしに見守りだした。のっぺりした好い男で、何となくそわそわしている。そこは稼業、こいつあおかしいぞ、と、三次、早くも気を締めた。
そんなこととは知らないから、番頭はいい気なもの欠伸まじりに、
「へえ――い。」
とか何とか答えながら、言われた品を取りに背後へ向くと、男は思いきったように進んで、飾台の傍へ腰を下ろした。
おやっと三次はきっとなった。番頭はまだうしろざまに紐の木箱を見立てている。
と、男の手がするすると動いて台の下へ辷って行った。それも瞬間、まさか碁石とは知らないから台の下から取った物を見もせずに素早く袂へ投げ込むと、男は何食わぬ顔で澄まし込んだ。ちょうどそのとき、番頭が紐の小箱を持って振り返った眼の前へ並べたので、男は何か低声で相談しながら、好みの品を物色し始めたが、結局、気に入ったのが一つもないと言って、何も買わずに店を出ようとした。
今押さえようか、と三次は思った。が、昨日来たのは女だという。してみれば共犯に相違ない。それならここはわざと無難に落してやって、跡を尾けて大きな網を被せるほうが巧者だと考え付いて、三次、静かに男の後姿を凝視めていた。