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あかるいかいひん
明るい海浜
宮本 百合子
「週刊朝日」1927(昭和2)年6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,608 字 · 16 页
陽子は結婚生活がうまく行かず、別れ話が出ている状態であった。
「あああ、私も当分ここででも暮そうかしら」
「いいことよ、のびのびするわそりゃ」
「――部屋貸しをするところあるかしらこの近所に」
ふき子は、びっくりしたように、
「あら本気なの、陽ちゃん」
といった。
「本気になりそうだわ――ある? そんな家……もし本当にさがせば」
「そりゃあってよ、どこだって貸すわ、でも――もし来るんならそんなことしないだって、家へいらっしゃいよ」
「二三日ならいいけど」
「永くたっていいわ、私永いほど結構! ね? 本当に家へいらっしゃいよ、淋しくってまいるんだから」
「いやあね、まだ決りゃしないことよ何ぼ何でも――」
笑い話で、その時は帰ったが、陽子は思い切れず、到頭ふき子に手紙を出した。出入りの俥夫が知り合いで、その家を選定してくれたのであった。
陽子、弟の忠一、ふき子、三日ばかりして、どやどや下見に行った。大通りから一寸入った左側で、硝子が四枚入口に立っている仕舞屋であった。土間からいきなり四畳、唐紙で区切られた六畳が、陽子の借りようという座敷であった。
「まだ新しいな」
「へえ、昨年新築致しましたんで、一夏お貸ししただけでございます。