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あかるいかいひん

明るい海浜

宮本 百合子

「週刊朝日」1927(昭和2)年6月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,608 字 · 16 页

青空文庫

手前どもでは、よそのようにどんな方にでもお貸ししたくないもんですから……どうも御病人は、ねえあなた」

筒袖絆纏を着た六十ばかりの神さんが、四畳の方の敷居の外からそのような挨拶をした。陽子は南向きの出窓に腰かけて室内を眺めているふき子に小さい声で、

「プロフェッショナル・バアチャン」

と囁いた。ふき子は笑いを湛えつつ、若々しい眼尻で陽子を睨むようにした。その、自分の家でありながら六畳の方へは踏み込まず、口数多い神さんが気に入らなかったが、座敷は最初からその目的で拵えられているだけ、借りるに都合よかった。戸棚もたっぷりあったし、東は相当広い縁側で、裏へ廻れるように成ってもいる。

陽子は最後に、

「賄はしてくれるんでしょうか」

と念を押した。

「へえ、どうせ美味しいものは出来ませんですが、致して見ましょう」

「賄ともで幾何です?」

神さんは

「さあ」

と躊躇した。

「生憎ただ今爺が御邸へまいっていてはっきり分りませんが――賄は一々指図していただくことにしませんと……」

忠一が、

「それはそうだろう」

といった。

「賄は別の方がいいさ、留守の時だってあるんだから」

「さよです」

「座敷代は、それじゃ源さんがいっていた通りですね」